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その130


渡良瀬の土手 その2



渡良瀬遊水地の恒例だった葦焼きが大地震の影響で中止になった。葦焼きをしないと虫が大量にわいたり、ツルがはびこったり、希少湿生植物が滅んだりと、いろんなところに影響が出てくると云われている。早速に野鳥の世界では、うれしい変化が現れた。今までは葦焼きを境にして見られなくなっていたハイイロチュウヒが、4月になっても渡らないで飛んでいるのだ。








ハイイロチュウヒ♂

日中は遊水池の中でおよそ見られないハイイロチュウヒの♂が堤防の上を飛んでいる。菜の花を背景にして飛ぶ姿には、枯れ葦とは比べようのない華やかさがある。







ハイイロチュウヒ♀

ここの堤防ではこの♀(片羽に欠けがある)が縄張りを持ち、ほかに♀2羽と♂2羽が時々飛んできていた。冬場では考えられない頻度である。








しかも、菜の花がある堤防だけを飛ぶ。不思議に思ってみていると、地上1mほどの高さを風下からゆっくり飛んで来て菜の花の陰から不意に飛び込んでネズミを捕っている。ネズミの出す鳴き声を聞きながら菜の花をブラインドにして飛び込むのである。








菜の花のブラインドのない堤防ではネズミに気づかれずに近づくことが出来ないので、不意打ちの狩りが出来ないらしい。









ネズミを見つけると身をひるがえして一気に飛び込む。







捕れたようだ。足踏みをして捕まえたネズミを押さえつける。








ハイイロチュウヒ♂

♂は♀より一回り小さいので、♀に見つかると縄張りから追い出されてしまう。♀の留守に縄張り内に忍びより菜の花ブラインドを利用して狩りをする。












この狩りの成功率は低く、飛び込んでも捕れない方が多い。





チョウゲンボウ

ホバリングの得意なチョウゲンボウは菜の花ブラインドの必要はなく、高空からネズミを狙う。この堤防にはネズミが沢山いるらしい。地面を見ると1平米当たり20個も穴が開いていた。








ノスリも風上に向かってホバリングしながら高空からネズミを襲う。捕まえると横取りされないように葦の中に運んでいった。







ハイイロチュウヒ♀

6時近くなってもまだ飛んでいた。





ハイイロチュウヒだけが沈みかかった夕日に染まって浮き上がった。背景の菜の花が川のように流れてみえる。

暖かい夕暮れが心地よく、いつの間にか昔々の小学唱歌が出てきた。



菜の花畑に 入り日うすれ

見わたす山の端 かすみふかし

夕月かかりて におい淡し



朧月夜ならぬ夕日が春霞を赤く染めて沈んだ。



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