その140

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イヌワシ2011



日光の奥山でもイヌワシに会える場所は限られていて、容易には出会えない。イヌワシは出てきそうな山中で一日待っても会えず、二日三日と待ってやっと望遠できれば良しとするほどに、観察自体がむずかしい猛禽なのだ。彼らの獲物はウサギやヤマドリで、開けた山肌を低く飛ぶ。最近は林業事情により林地の伐採がほとんど無く、ウサギやヤマドリが生きていくために適した開けた若い林が極端に無くなってしまっている。イヌワシは以前にもまして広範囲に獲物を求めて飛び、一度出会えた場所でも、そこに戻ってくるのはいつになるか分からないほど遠くまで移動する。したがって、獲物をより多く必要とする子育てが非常にむずかしくなっている。そんな日光のイヌワシが今年は子育てに成功し、秋空に舞う幼鳥の姿を見ることが出来た。





イヌワシの幼鳥

幼鳥は両翼と尾羽根に大きな白い紋をつけている。翼は2m余もあり、堂々と飛んでいるようだが、7月に巣立ったばかりで、やっと飛んでいるようにも見える。巣立ってしばらくは親から餌を貰いながら飛行と狩の技を身につけ、この冬には親離れを強いられる。幼鳥は親離れしてから一年の間に7割が死んでしまうと云われている。狩りの未熟な幼鳥にとって巣立ち後の一年が最大の試練の年なのだろう。





イヌワシの成鳥

イヌワシは成鳥になると白い紋が無くなるかあっても目立たないほど小さくなる。

獲物を探すイヌワシは山の端から一気に林すれすれに降りてくる。ウサギやヤマドリが驚いて飛び出すところを仕留めようと山肌を低く飛ぶのだ。斜面を繰り返し丹念に飛んで探していたが、この時は何も出てこなかった。





イヌワシの侵入個体

トビをお供に南の空からイヌワシが現れた。白い班の大きさから推して昨年か一昨年にどこかで巣立った若鳥らしい。若鳥は親の縄張りから追い出され、新たに自分の棲むところを見つけなければならない。が、イヌワシが棲める山地はそうそう無く、すでにイヌワシのいるところへ侵入しても、前からいるイヌワシに追い払われる。この若鳥は新しい棲みかを見つけるまで日本中の山地をさまようことだろう。





長野のイヌワシ

日光ではイヌワシが間近で見られるところはむずかしい。長野と新潟の境にある峠ではイヌワシが頭上を飛ぶところがあるという。秋の一日、行ってみると教えられたように頭上近くを飛んでくれた。現場で会った地元同好の士によると、5日目にして今日やっと出会えたと喜んでいた。行った日に出会えた私は大当たりだった。








長野のイヌワシ

頭上を越してから突然急降下していった。先に飛んでいたノスリを追ったのだ。イヌワシに追われてノスリも林の中へ急降下していった。ノスリを追うイヌワシを今まで見たことが無い。あっという間の出来事だった。その後、ノスリもイヌワシも出てこなかった。








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