その152
サシバは間もなく秋の渡りの季節になり、3月末に渡来して5か月の間に巣作り産卵・子育てを終えて、旅立っていく。今年は毎年観察している谷津田のサシバにオスの交代があった。昨年までの4年間はオスとメスが羽衣の特徴から同じと思われるツガイだったが、今年は観察を始めて10日でオスが入れ替わった。
これはサシバのオス。茶色が少し濃い色合いで、白い眉班がない。
こちらがサシバのメス。褐色に黒味が混じり、白い眉班が目立つ。
4月初めの田んぼには、まだヘビもカエルも出ていない。サシバのオスはケラなどの小さな虫を見つけてメスにせっせと運んで与える。
この時期の交尾は一日10回くらいと頻繁だ。
餌運びと交尾が一段落するとしばし並んで休息をとる。
格好よく飛び込んでも大物が捕れるわけではない。
捕れるのはほとんどが小さなケラ虫。この日(4月13日)がこのオスを見た最後だった。
二日後(4月15日)に行ってみると、今までのオスに代わって白い眉班のあるオスが近くの電柱にいた。眉班のない今までのオスは新しいオスに追い出されてしまったのか、見当たらない。
新しくあられたオスが電柱から飛び降りて、舗装路に出てきた虫を捕る。
しかし、捕った虫をメスに運ぶことなく、食べてしまった。その後、何度も虫を捕るが、メスに運ぶことなく、すべて食べてしまった。今までのオスは自分で食べるのは五回に一回ほどだったから、メスにすれば大変な様変わりだ。
メスは新オスが虫を運んでこないので、辛抱できずに自身で田んぼに降りて虫捕りを始めた。そこへ新オスが飛んできて交尾を迫ったのだが、メスはオスに向かって身構えた。
オスを背中に乗せようとしない。獲物を一度も運んでこないこのオスを新しい配偶者と認められないのだろう。
サシバはメスがオスより大きいのだ。メスがオスの腹部に爪を立てたらオスは即死するだろう。サシバはレイプなど絶対に出来ないのだ。
その日、メスは自身で虫を捕り、オスを受け入れることはなかった。
*三日後に行ってみると新オスの姿だけでメスは見られなかったが、さらに二日後に行くと遠くの林縁の枝にペアーで止まっていた。どうやら合意が成ったらしい。